研究概要 |
膵がんは非常に予後の悪い疾患で根治的な治療法は手術しかない。しかし発見時に進行していることが多いため現時点では膵がんで手術可能な患者は全体の20%程度しかいない。膵がんの治療成績を上げる最良の方法は早期診断法の確立であるが、今のところ画像診断と血液検査の双方とも期待に応えられるレベルに達していない。 我々はこれまでにヒト悪性腫瘍(大腸癌組織)の内在性アンチセンスRNAに関して、4万種類を超える発現を網羅的に解析した。その結果、特定のセンス/アンチセンスRNAが癌の進行に伴って増加又は減少していることを確認した。さらに予備的実験において、末梢血中でも特定のアンチセンスRNAが癌(大腸,肝臓)患者で特異的に増減していることも確認した。そこで本研究では末梢血中に特異的に増減するアンチセンスRNAに着目した。早期発見の非常に困難な膵がんにおいて、早期癌の状態から末梢血中で特異的に変化をきたすバイオマーカーとしてアンチセンスRNAの組み合わせを特定し、末梢血を用いた全く新しい高感度の膵がん診断法を確立することを最終目標とする。 平成24年度は研究をスタートさせるための準備と予備実験を中心に活動した。膵がん患者の術前の血液および手術標本より膵がん組織のサンプリングを行い、現在も検体を収集中である。また術前と術後3か月ごとの腫瘍マーカーCA19-9、Span-1、Dupan-2を継続して測定しており、患者のバックグランドデータとして収集中である。ヒト膵がんラット肝転移モデルを確立するため、ヒト膵がん細胞株SUIT-2、AsPC-1、BxPC-3を継代培養中である。
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