研究課題
古典的小脳失調マウスであるStaggererマウスは、核内受容体ファミリーの転写調節因子retinoid-related orphan receptorα(RORα)の機能消失が原因であり、小脳では代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)を介する遅いシナプス伝達(slow EPSC)は完全に消失している。一方、脊髄小脳失調症1型(SCA1)モデルマウス(B05マウス)の小脳でRORαの量が減少していることが報告されている。そこで、B05マウスのプルキンエ細胞においてもmGluRシグナルの障害が見られるのではないかと考えて小脳スライスパッチ実験を行った。その結果、生後3週のB05マウスは野生型マウスと差は見られなかったが、生後5週以降のB05マウスではmGluR1活性化によってトリガーされる1)slow EPSC、2)内因性カンナビノイドを介するシナプス前抑制(SSE)、3)平行線維ープルキンエ細胞シナプス伝達の長期抑圧(LTD)誘導に障害が見られた。そこでアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて生後5週のB05マウスのプルキンエ細胞にmGluR1を発現させ、mGluRシグナルを補ったところ、生後12週の時点で有意に運動失調は軽く、slow EPSCとSSEについても障害が軽度であることを明らかにした。同様のmGluRシグナル障害はSCA1ノックインマウスにおいても観察された。さらにmGluRシグナルを増強させる薬剤を、B05マウスに投与したところ、顕著な運動学習能力の向上が認められた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cerebellum
巻: 13 ページ: 29-41
10.1007/s12311-013-0516-5