申請者は触覚技術がより多くのユーザからアクセス可能となることを目指し、触覚的表現を簡単に作成・共有する仕組みを提案している。その中で、本研究では運筆動作に注目し手掌部上を指先でなぞる軌跡を採用した触覚コンテンツの生成手法とその共有のための枠組みを提案した。 25年度は24年度までに作成したタッチスクリーンデバイスにより運筆動作を記録し、その軌跡(位置・時間)情報を画像フォーマットに保存することでTwitterをはじめとする既存のソーシャルメディアを介して拡散・共有するシステムをもとに、新たな着想である「触覚絵文字システム」の実証システム作成と評価に取り組んだ。 触覚情報は握手やハグで親密さを表現するといったことには向くが言語のように意味の伝達には不向きでありコンテキス依存のコミュニケーション手段である。話者の表情も同じような性質を持っており、これはテキスト中に挿入することで書き手の感情を端的に表現する絵文字・顔文字として盛んに用いられている。申請者は触覚情報により絵文字と同等あるいはそれ以上の効果を持つ感情表現の可能性を考え、第一年度で作成した触覚コンテンツ生成・共有システムを用いてテキスト情報中に自作の触覚コンテンツを絵文字として挿入する機能を実装した。提案する触覚絵文字の効果についての厳密な評価は今後の課題として残されている。 当初期待していた触覚コンテンツ生成・鑑賞・共有システムの実現から触覚絵文字という応用を着想し、その実装まで研究を発展させることができた。
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