本研究は可視化データ認知におけるバイアスの発生機序の解明、及びバイアス除去のための学習法の確立を目指し、以下の3 つのテーマについて実験研究を行うものである。(1)グラフ理解課題時の眼球運動測定を行い、視線パターンのダイナミクスを同定する。(2)高次データ変換法を用いた認知課題により、グラフ理解におけるノービスとエキスパートの認知モデルを明らかにする。(3)可視化データ認知におけるバイアス除去のための学習法を開発し、効果を検証する。 初年度は当初計画通り(2)の高次データ変換法を用いた認知実験を行った。高次データ変換法とは3次元以上からなるデータに対して部分次元の関係を複数のグラフで呈示し、それらを統合することで高次元データの把握を求めるという新規な手法である。予備的実験として当初予定の実験内容(グラフ作成課題)を実施した結果、課題難易度が非常に高く、エキスパートの被験者にとっても課題遂行が困難であった。このため実験課題を一部変更し、部分的に情報が欠落したグラフを完成させる課題に変更した。課題変更の結果、ノービスの被験者であっても課題を遂行できる程度の難易度に調整することが可能であった。 実験の結果、試行を重ねるにつれて課題遂行時間や正答率において向上が認められた。また呈示する部分グラフ次元の空間関係による効果も認められた。今後、学習進行に応じたバイアスの減少等の詳細な分析を行う予定である。
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