研究課題
線虫は特定の塩濃度の領域へ向かう性質があり、進行方向および垂直方向の塩濃度勾配に対してそれぞれピルエット機構と風見鶏機構という異なる行動戦略を用いている。その際神経ネットワークにおいては塩濃度勾配の方向の情報が時間的に多重にコードされていると考えられる。本研究では、多重にコードされた情報を分離・抽出する機構を同定し、その動作原理の解明を目指して、<1. カルシウムイメージングによる神経細胞の活性測定>と<2. 実験データに基づいた数理モデルの作成>、<3. 数理モデルの解析と動的特性の検証>を行った。1.について、線虫の神経ではCa2+レベルの緩やかな変化によって信号を伝えているが、改良型の微小流路デバイスを導入した結果、感覚神経のCa2+レベルの下限は既存のプローブの検出下限を下回っており、緩やかなCa2+レベルの変化を正しく測定できていないことがわかった。そこで、親和性を改良したプローブや、近年開発が進んでいる膜電位感受性蛍光プローブの導入を進めている。また、ある神経細胞についてはプローブの特異的な発現を誘導することが困難だと判明したので、4Dイメージング観察技術によりこの神経を測定できるよう、得られた画像データを解析するためのプログラムの作成を更に進めた。2. および3.では、塩濃度感覚神経の数理モデルについて、先行研究を元にMatlab上の微分方程式モデルとして実装し、実験データを再現できるようパラメータ推定を行った。その結果、既存の反応経路だけでは、実験結果に現れる一過性の応答を再現できない可能性が示唆された。別の感覚神経の数理モデルでは一過性応答が再現できたとの既報がある。そこで、一過性応答などモデルの動的特徴が、モデルのどの経路に依存しているかを解析する枠組みを実装した。この枠組みを既報のモデルに適用し、得られた経路を塩濃度感覚神経の数理モデルに追加して、一過性応答を再現できるよう改良した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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