研究課題/領域番号 |
24800022
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山岸 昌夫 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30638870)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 信号処理工学 / 線形パラメータ推定問題 / リスク推定量 / SURE / 悪条件 / 低階数最小分散擬似不偏推定法 / 画像復元 |
研究概要 |
信号処理は,適応システム同定や機械学習など,幅広い応用をもつ重要な技術である.信号処理の諸問題は線形パラメータ推定問題(推定対象に既知のモデル行列がかかり,雑音が加わった観測値が得られるとき,観測値から推定対象を推定する問題)として定式化される.その近似解として「注意深く設計された制約付き最適化問題の解を採用する方法」が広く用いられており,優れた近似解を実現する最適化問題の設計には「リスク推定量(統計的手法により自然に導出される目的関数)」の利用が効果的であることが分かってきている. 今年度は,代表的なリスク推定量であるStein's Unbiased Risk Estimator (SURE)の改善を提案している.SURE は「観測値,モデル行列,推定に用いる写像」の三つ組から計算可能な「推定対象との平均二乗誤差の不偏推定量」である.本研究では,SUREが「悪条件な(最大特異値と最小特異値の差が大きい)モデル行列に対して,二乗誤差との乖離が著しく大きくなる」弱点を有することを理論的に明らかにしている.また,リスク推定量として「モデル行列と推定対象の積に対する平均二乗誤差の不偏推定量」を提案し,悪条件下においても小さい乖離を実現することを理論的に明らかにしている. さらに,上記の成果を用いて線形パラメータ推定問題の解法である「低階数最小分散擬似不偏推定法 [Yamada and Elbadraoui(2006)]」の階数選択問題を解決している.具体的には「提案リスク推定量を最小にする階数を選択すること」を提案し,画像復元問題への応用において,(i)提案法が(推定対象との二乗誤差を最小にする)最適な階数の優れた近似を実現することを数値的に明らかにすると共に,(ii)モデル行列の特別な構造を利用した提案法の効率的な実装を実現している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(i)優れた「リスク推定量」を提案し,(ii)その「リスク推定量」を利用した制約付き最適化問題を設計し,(iii)効率的な解法を実現することを目的としている.画像復元問題に対して全ての目的を達成できているため,概ね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は適応信号処理や能動騒音制御への応用を考えている.また,モデル行列の構造を利用しない高速解法の実現も検討している.
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