マラリアは年間200万人程度の人間を死に至らしめる寄生虫感染症である。本研究の目的は、マウスの9番染色体の約1.68Mbの領域(Pymr1領域)内に存在するマラリア原虫の増殖性に関与する主要な宿主遺伝子を同定することである。昨年度は、Pymr1領域に存在する遺伝子の中から、マラリア原虫の増殖性に関連していると考えられる遺伝子の絞り込みを行った。リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析の結果、マラリア抵抗性系統よりも感受性系統間で共通して発現量の上昇を示す遺伝子を見いだした。そこで本年度は、これらの候補遺伝子が実際にマラリア原虫の増殖性に関与しているか否か検討をするため、遺伝子欠損マウスを用いた実験を計画した。しかしながら、これらの候補遺伝子の欠損マウスの入手が困難であったため、候補遺伝子の発現量を増加させたTGマウスを作製し、マラリア抵抗性が変化するか否か検証を行うことにした。RIKEN BRCより候補遺伝子領域を含むBACクローンを入手した。このDNAをマイクロインジェクションにより導入した受精卵を仮親に移植することによってTGマウスを得た。現在、マラリア抵抗性解析に必要な個体数を得るために、TGマウスの交配を行っている。この研究によって腫瘍な宿主遺伝子を同定することができれば、その作用機序をモデルとして新たな治療薬・予防法の開発につながる革新的な知見を得ることできると考えられる。
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