研究課題/領域番号 |
24800037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江間 有沙 京都大学, 白眉センター, 助教 (30633680)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 安全・安心 / 科学技術社会論 |
研究概要 |
安全と安心は一続きで用いられることが多い概念であるが、政策の実現や技術の評価といった具体的な指標が必要とされる分野においては、安全を物理的・客観的と定義し、そこからもれ落ちる主観的な感情などの要素を「安心」と名付け、これに対してはリスクコミュニケーションなどで対応しようという流れが2000年以降形成されつつある。科学技術や社会の安全・安心に関する研究は、人文・社会から工学・自然科学、また政策に至る多様な分野において取り組まれているが、安全・安心に関する研究そのものが、どのような歴史的背景や政治・経済・技術的な介入のもと重要とみなされるようになってきたかは、個別の具体例とは別に検討する必要がある。 本研究課題では(A)安全・安心に関する研究そのものの枠組みの検討と、(B)安全・安心研究の生成過程に関する研究を互いに関連させながら研究調査を行う。初年度は主に(A)に焦点をおき、主に1980年以降を対象とした。個別分野としては、防犯・防災、原子力、食など個別分野における安全・安心に関する言説に着目し、アカデミックな論文や書籍だけではなく、新聞や雑誌などメディアにおける表現や、白書など政府資料も分析対象とした。 調査からは、同じ「安全から安心へ」というスローガンを掲げていても、「安心」確保まで他機関や市民との協力のもと行政が拡張する根拠として使われるものから、逆に行政の役割を縮小する根拠として使われるものなど、安全・安心概念を用いる主体や個別具体例によって多様に使い分けられている構図が浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では(A)安全・安心に関する研究そのものの枠組みの検討と、(B)安全・安心研究の生成過程に関する研究を互いに関連させながら研究調査を行う予定である。初年度は主に(A)に焦点をおき、防犯・防災、原子力、食など個別分野における安全・安心に関する言説の調査を行い、おおむね順調に進展している。本研究課題は2012年11月に行われた科学技術社会論学会で発表を行った。また、そこでの発表をもとに、現在論文を執筆中である。さらに、アメリカ・コーネル大学の情報技術史家であるKline氏をはじめとする、本研究に関する国内外の研究者や当事者に対し、研究の枠組みの検討や方法論などに関し、適宜アドバイスも受けた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では(A)安全・安心に関する研究そのものの枠組みの検討と、(B)安全・安心研究の生成過程に関する研究を互いに関連させながら研究調査を行う予定である。今年度は初年度で得られた調査をもとに(B)に焦点をおき、調査を進めていく予定である。安全・安心研究の生成過程を調査するにあたっては、歴史的あるいは政治・経済・技術的な観点からの知見も必要とするが、これまでの研究活動を通して培ってきたネットワークを生かし、本研究に関する国内外の研究者や当事者に対し、研究の枠組みの検討や方法論などに関し、適宜アドバイスを受ける予定である。
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