本研究ではヒト静止立位時における神経制御戦略を明らかにすることを目的とし,健常者およびパーキンソン病患者の姿勢動揺計測実験,および数理モデルのシミュレーションを行った.計測実験により,静止立位時にける股関節が大変柔軟であること,また数値シミュレーションにより,その股関節の柔軟性が姿勢維持に重要な役割を果たすことを明らかにした.健常者とパーキンソン病患者の姿勢動揺の差異より,パーキンソン病患者の姿勢の不安定化が,健常者の柔軟な姿勢制御メカニズムの崩壊によって引き起こされている可能性が示唆された.ここで得られた知見は,パーキンソン病重症度の定量的な診断指標の構築などへ応用できることが期待される.
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