研究課題/領域番号 |
24800039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増田 佳純 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20533293)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 超音波医学 / 虚血診断 |
研究概要 |
虚血性心疾患は、癌や脳血管疾患とともに日本人の死因の中でも極めて大きな位置を占め、患者数も増加している。この虚血性心疾患の重症度は、虚血時間と虚血領域の大きさに大きく規定されるため、虚血領域を推定することは非常に重要である。近年3次元(3D)スペックルトラッキング法が開発され、3次元でイメージングすることにより心臓全体の動きを一度に評価可能となったが、2D心エコー法に比べ、画質が劣るため心筋ストレイン解析の際に再現性が低下する問題点が指摘されている。この画質の問題は本法に超音波造影剤を併用することで改善できる可能性が考えられる。本研究の目的は、動物実験により、超音波造影剤併用3Dスペックルトラッキング法の実行可能性を評価し、実際に虚血診断精度が改善するか検討することである。 平成24年度は麻酔開胸犬を用い、超音波造影剤ソナゾイドを末梢静脈よりボーラス投与及び持続投与し、画像を取得した。超音波造影剤を投与した際に適したと思われる画像設定を行い、トラッキング方法の工夫によりスペックルトラッキング解析が可能であった。スペックルトラッキング解析では、長軸方向ストレイン(longitudinal strain)、中心方向ストレイン(radial strain)、円周方向ストレイン(circumferential strain)、及び、area strain (longitudinal strainとcircumferential strainを加味した新しい指標)を心時相の収縮期と拡張期で測定可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は研究期間が半年と短かったため、超音波造影剤を投与した際の画像設定を行い、トラッキング可能かを検討することのみ行った。トラッキング方法を工夫することにより、心内膜面の正確なトラッキングが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験は当大学の動物実験規程に基づき実施される。人工呼吸器管理下の麻酔開胸犬において、超音波造影剤ソナゾイドを末梢静脈より持続投与し、画像を取得する。前年度の検討より造影剤併用時においてもトラッキングが可能であることは示されたので、より心内膜面が鮮明に描出できる3D心エコーの設定条件(造影剤注入量、注入方法、超音波照射音圧やフレームレートなど)を選定する。 2D心エコー法では、コントラストエコー法で心内膜の描出を鮮明にすることで、診断精度の改善が見られるが、3D心エコー法ではその効果は不明である。選定した設定条件を用いて、虚血作成前の3D心エコー法による画像を取得し、各スペックルトラッキングによる指標の再現性を検討する。心エコー画像及びスペックルトラッキング解析は、現有している最新の超音波装置と解析ソフトウェアを用いて行う。スペックルトラッキング解析では心時相の収縮期と拡張期でストレイン指標を測定し、心筋運動の定量評価を行う。 次に、短時間の冠動脈閉塞(2分間)モデル、狭窄モデル(冠動脈血流が安静時の50%低下)を作成し、冠動脈狭窄中、冠動脈閉塞中の画像を取得する。得られた画像をオフラインにてスペックルトラッキング法で解析し、虚血領域中心部における心筋運動指標(収縮期および拡張期の各方向の心筋ストレイン)の変化を評価し、虚血領域が正確に評価できるかを検討する。虚血領域は、冠動脈閉塞時のエバンスブルー染色で評価する。エバンスブルー染色から得られた虚血領域と3D造影スペックルトラッキング法によるブルズアイマップから算出された虚血領域を対比させ検討する。
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