虚血性心疾患は、癌や脳血管疾患とともに日本人の死因の中でも極めて大きな位置を占め、患者数も増加している。この虚血性心疾患の重症度は、虚血時間と虚血領域の大きさに大きく規定されるため、虚血領域を推定することは非常に重要である。近年3次元(3D )スペックルトラッキング法が開発され、3次元でイメージングすることにより心臓全体の動きを一度に評価可能となったが、2D心エコー法に比べ、画質が劣るため心筋ストレイン解析の際に再現性が低下する問題点が指摘されている。この画質の問題は本法に超音波 造影剤を併用することで改善できる可能性が考えられる。本研究の目的は、動物実験により、超音波造影剤併用3Dスペックルトラッキング法の実行可能性を評価し、実際に虚血診断精度が改善するか検討することである。 平成25年度は麻酔開胸犬を用い、超音波造影剤ソナゾイドを末梢静脈より持続投与(30 ml/h、90 ml/h)し、画像を取得した。造影剤投与時には、3段階の超音波音圧(-20 dB、-14 dB、-8 dB)下に画像を取得した。スペックルトラッキング解析では、長軸方向ストレイン(longitudinal strain)、中心方向ストレイン(radial strain)、円周方向ストレイン(circumferential strain)、及び、area strain (longitudinal strainとcircumferential strainを加味した新しい指標)を計測した。結果として2Dスペックルトラッキング法に比べ超音波造影剤投与量30 ml/hおよび音圧-14 dBでの3Dスペックルトラッキング法を用いることで、心内膜の視認性は向上し、ストレイン波形の局所間ばらつきが低減し、精度よくトラッキング解析が可能であった。
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