本年度は、マウスCXCR1 ペプチドによる腫瘍局所のTreg 集積阻害を目的として以下の3項目について研究を行った。 1) ペプチドの投与量、投与時期の決定 2) 決定した投与条件で複数のマウス腫瘍細胞株を用いた腫瘍縮小効果の検討 3) 決定した投与条件下でTIL 中のTreg の割合が減少するかを検討する 1)について、マウス白血病細胞株RL male 1を用いたマウス腫瘍モデルにおいて、ペプチドの投与回数、時期、経路を決定した。投与時期は腫瘍接種後7日目、投与回数は3回、投与経路は静脈内投与で腫瘍縮小効果が観察された。また投与量は、0.025~2.5 mg/kgで効果が認められ、0.125 mg/kgの条件で最も腫瘍拒絶が観察された。2)について、RL male 1の他、線維肉腫細胞株MethA、CMS17、大腸がん細胞株colon26、乳がん細胞株4T1において同条件で実験を行ったところ、すべての細胞株で腫瘍縮小効果が認められた。3)について、RL male 1腫瘍組織を各マウスにおいて経時的に切除し、フローサイトメーター前処理装置により腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を回収後、FACSCantoIIによりTregの割合を測定した。1)の条件で、TILにおいて、ペプチド投与ごとに劇的にTregの減少が観察された。これらの結果より、Tregの遊走を阻害するCXCR1ペプチドは複数種の腫瘍細胞に対して効果があり、腫瘍が生着してからでも効果があることから、ヒトへの応用も可能であると考えられる。また、CXCR1ペプチド投与により、がん抗原特異的な免疫応答の誘導が検出されれば、がんワクチンをはじめ、各種免疫療法との併用で既存の治療効果を進展させることができる可能性もある。
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