研究代表者らが開発した磁気共鳴画像法(MRI)でアーチファクト(偽像)を生じないAu-xPt-8Nb合金は、高強度を示すが加工性が低く複雑な形状の医療用デバイスの作製には不向きである。本研究では、この欠点を改良するため、より加工性が高い合金であるAu-Pd合金をベースとして第3元素Xの添加によって、アーチファクトフリー(本研究では生体と同等の磁化率‐9ppmを目標とする)を示し、高強度と高加工性を両立させた合金の開発を行ってきた。Au-Pd-X合金のうちPd=10~26mass%の範囲において1000℃で単相化が可能で磁化率‐9ppmを示す組成が存在することが平成24年度まででわかった。これらの合金は時効熱処理(温度を制御することで複相化し、強度を増加させる処理)による強化が可能であり、現在医療用デバイスで多用されているTi-6Al-4V合金と同等以上の強度を示すことが明らかになった。また、常温において容易に加工可能で、より複雑な形状の医療用デバイスへの加工が期待できる。以上より、Au-Pd-X合金はアーチファクトフリーを維持しつつ高強度と高加工性を両立し、Au-xPt-8Nb合金より幅広い医療用デバイスへの応用が期待できる。今後は、Au-Pd-X合金への第4元素の添加や結晶粒の微細化を試みることによる更なる強度の向上を主眼とし、例えばより細い血管に適用可能な細いステントなどに応用可能な合金の作製を目指す。
|