今回の研究の目的は,第1世代照明デバイス(以下,旧照明)で問題であった「白うき」を解決する第2世代の照明デバイス(以下,新照明)の有用性,および,新照明を用いた手術システムの有用性を客観的に検証することが,2本柱であった. そこで,新照明を用いて,平成25年度もブタを用いた動物実験を行った.動物実験では,常備されている標準画質の腹腔鏡ではなく,ハイビジョン画質の腹腔鏡を借用し,記録媒体も通常のDVDから,ブルーレイディスクを用いた.これにより,通常の臨床と同質の手術映像で手術を行い,記録することができた.その結果,2点のことがわかった.まず,旧照明では「白うき」のために手術困難であった腹腔鏡下肝切除術において,「白うき」が解決され手術が可能となったことである.旧照明において,唯一手術困難であったのが肝切除術であったことから,これにより,ほとんどの腹腔鏡手術が可能となったことを意味する.次に,主観的評価ではあるが,新照明により,立体感や奥行き知覚の欠如が改善されたことに加え,手術映像に精細さが増したことや,開腹手術で,臓器を直接見ているかのような自然な見え方をすることがわかった.こういった美しい手術映像は,これまでの腹腔鏡手術映像では見られず,新照明を用いた,ハイビジョン撮影によってしか得られなかった映像であり,非常に重要な結果であったと思われる.すなわち,手術チーム全体が手術中の体腔内の情報をより正確に共有することが可能となることが期待できる点で,画期的と思われる.なお,本研究の成果については,平成25年6月の第21回欧州内視鏡外科学会において,口演発表した. しかしながら,もう1つの柱であった,手術システムの有用性の客観的評価まではいたらなかった.
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