研究概要 |
本研究の目的は、ラットの自然な寒冷時体温調節行動と考えられる「尾隠し行動(Uchida et al., 2012, J Comp Physiol A)」を指標とし、【実験1】絶食により変化する摂食ペプチドのグレリン及びレプチンの尾隠し行動への影響、【実験2】強い摂食抑制作用のある女性ホルモンのエストロゲンの尾隠し行動への影響及び脳内活性部位を明らかにすることであった。 【実験1】自由摂食、42-h絶食、グレリン投与雄ラットの寒冷暴露(環境温15°C, 2-h)を行った。深部体温(Tb)はグレリン投与においてのみ有意に低下した。暴露後の尾隠し行動の開始時間はグレリン投与において自由摂食、42-h絶食より有意に早まった。暴露中の尾隠し行動時間は42-h絶食、グレリン投与において自由摂食より有意に増加した。尾部皮膚温(Ttail)は42-h絶食において自由摂食、グレリン投与より有意に低下した。 【実験2】エストロゲン投与(E2(+))、非投与(E2(-))の卵巣摘出ラットの寒冷暴露(環境温11°Cまたは16°C, 2-h)を行った。環境温11℃ではTb、Ttail、尾隠し行動の開始時間、暴露中の尾隠し行動時間はE2(-)、E2(+)間に有意な差は認められなかった。環境温16℃ではTb、Ttailは有意な差は認められなかったが、尾隠し行動時間はE2(-)よりE2(+)で有意に増加した。尾隠し行動の開始時間はE2(-)よりE2(+)で有意に早まった。 【結論】雄において絶食およびグレリンが寒冷時尾隠し行動を促進すること、雌においてエストロゲンが寒冷時尾隠し行動を促進することが明らかとなった。 【補足】脳内活性部位については全サンプルのcFos蛋白の免疫組織化学染色を終え、現在、陽性細胞数の計測を行っている。レプチンの影響については時間的制約により実施できなかった為、今後の研究課題とする。
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