本研究の目的は、左半側空間無視患者の意識下の処理、特に刺激が文字の場合の意味処理の深さを明らかにすることである。この目的を達成するため、プライミング実験を実施し、無視側に呈示されたプライム刺激のもつ文字情報が、後続のターゲット刺激の認知に及ぼす影響(プライミング効果)を検討した。 半側空間無視患者を対象とした実験の結果、症例の中に、パソコン画面の左側にヒントがある条件において、プライミング効果が観察されるものがいることが確かめられた。この結果は、左半側空間無視における意識化されない処理を反映している可能性を示唆する。本研究によって、文字の意味処理が一定のレベルまでなされうることが明らかになった。
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