本研究の目的は,異文化間の教師の教育観に配慮した国際交流学習のガイドラインを提示することである.平成25年度は関西大学初等部とインドのニランジャナスクールとの国際交流学習の実践をもとにし,教師が,授業実践に関わる組織・団体とどのような関係を形成して国際交流学習の実践を実現していったのか,その特徴を検討した.研究の理論的枠組みとして拡張的学習理論(ENGESTROM 1987)を参考とした. 分析データは,2012年4月から2013年3月に日本の教員へのインタビュー,交流相手であるインドの学校や相手の子どもがおかれている環境についてフィールド調査,国際交流学習に関わる会議メモ・メール・スケジュール調整に関する経緯,の3つである.これらを分析データとし,教師と他の組織・団体との関わりを抽出し,その特徴を分析した. 分析の結果,国際交流学習を実施する教師と,その実践にかかわる組織・団体について(1)活動の間接横断,(2)内省を促す働き,(3)新しい活動の創出の3つの特徴が明らかになり,これらをふまえてガイドラインを検討する必要があることがわかった.それぞれの特徴は(1)教師は様々な組織・団体の活動へ参加し,その経験を教室に持ち込み児童へ還元する,(2)他の組織・団体との関わりは,教師自身に学校の授業において取り組める国際協力実践活動の境界的な領域を意識化する,(3)教師は他の組織・団体の活動へ間接的にアクセスする中で,国際交流学習の授業目的や方法を変更し,他の組織・団体と新しい活動を展開する,である. 今後の研究課題は,国際交流学習に関わった組織・団体などを中心として国際交流学習の全体像を分析ことである.
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