研究課題/領域番号 |
24800079
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
河本 絵美 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (40634514)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 不活動 / インスリン抵抗性 / 骨格筋 / 軽運動 |
研究概要 |
不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性の防止には、不活動に陥る以前に、筋細胞内エネルギー不足(ATPやCrPの減少)によって活性化されるAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化させることが有効である。しかしながら、AMPK薬理的活性化剤をヒトに投与することは現実的な処方ではない。そこで、不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性を防止するためにAMPK活性化作用を有する運動に着目した。本研究では、高齢者や身体障害者など不活動を余儀なくされる人々にも活用できることを考えて、より強度が低く時間が短い軽運動による不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性防止効果について検討することを目的とした。 ラットに分速18mの速度で90分間の走行運動を負荷したところ、その後24時間のギプス固定によって不活動筋に生じるはずのインスリン抵抗性が防止できた。次に、分速18mの速度で45分間の走行運動を負荷して運動時間を短縮したところ、90分間の場合と同程度の効果が観察された。しかし、分速9mの速度で90分間の走行運動を負荷して運動強度を低く設定したところ、不活動誘発性インスリン抵抗性防止効果は観察できなかった。分速18mは分速9mの速度に比べてAMPK活性化レベルが高いと考えられることから、不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性の防止には、不活動に陥る前に、ある一定レベル以上にAMPKを活性化させる必要があることが示唆された。 現在、防止効果のあった運動条件においてその分子機序を検討している。分子機序のひとつとして、不活動によって生じた細胞内インスリン情報伝達酵素AktおよびAS160のリン酸化レベル低下が事前の運動によって抑制されているかどうか、引き続き調べていく。さらに、運動と同様にAMPK活性化作用を有する温熱刺激についても同様の検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性を防止する運動条件について、分速18mの速度では45分間の走行運動でその防止効果を観察することができた。一方、分速9mの速度では時間を長くしても防止効果を観察できなかった。これらの結果は、不活動誘発性インスリン抵抗性を防止するには、不活動に陥る前に、事前にある一定のレベル以上にAMPKを活性化させておくことが必要である可能性を示唆している。さらに現在、不活動に陥る以前に行うこれらの運動がどのような分子機序で防止効果を発揮するのか、ウェスタンブロッティングを用いて細胞内インスリン情報伝達酵素の活性を評価し、検討を進めている。このように、2012年度の主課題であった、不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性を防止する軽運動条件の検討を終え、その分子機序についても実験に着手していることから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性を防止する運動条件を絞り、その分子機序を明らかにする実験にも着手している。今後の研究では、分子機序解明のために、防止効果が確実に得られている運動条件において、細胞内インスリン情報伝達酵素AktおよびAS160リン酸化レベル低下が抑制されているかどうか、引き続き検討を進める。また、運動と同様にAMPK活性化作用を有する温熱処置に着目し、不活動に陥る前に、事前に温熱刺激を加えることが、その後の不活動によって生じる骨格筋インスリン抵抗性を防止できるかどうか検討を行う。また、防止効果が得られた条件において、ウェスタンブロッティングを用いて細胞内インスリン情報伝達酵素の活性を評価し、その分子機序についても検討を行う予定である。
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