研究課題
被験者とほぼ同時に撮像される物理ファントムのMRI画像上の基準点の誤差から、MRIの歪みを補正する手法を提案し、その有効性を検証した。全国38施設42装置で撮像されたファントム画像の基準点誤差の平均自乗根(RMS)の補正前と提案手法による補正後を示す。 補正前のRMSは0.72 (± 0.28) mmであったが, 補正後は0.28 (± 0.53 × 10-1) mmであった. Willcoxonの符号順位検定を行ったところ, 補正後画像では有意な改善がRMSについて見られた(p < 0.0001).歪み補正前と補正後の左右の海馬の年間萎縮率から求められる治験実施時の必要被験者数を示す。試算した結果、補正前でそれぞれ255名(左海馬)、 176名(右海馬)であった被験者数が、補正後は148名(左海馬)、175名(右海馬)と大きな改善が見られる。補正前の画像から試算される被験者数が多くなる原因として、MRIの幾何学的歪みによる縮小が海馬領域に多く見られたため、海馬の年間萎縮率が過小評価されることが考えられる。提案手法による歪み補正により、ファントム内の歪みによる誤差が提案手法により軽減されることを示した。また海馬領域の歪みが改善されることにより、海馬の年間萎縮率がより顕著となるため、アルツハイマー病のバイオマーカーとしてより有用になり得ることが本研究の成果として示された。MRIを用いた画像解析の信頼性が提案手法を用いて向上されることから、今後の臨床研究あるいは臨床治験などが、より少ない被験者で実施できる。臨床治験における問題は、必要被験者数の増加に伴う、実施コストの増大が挙げられる。よって本研究の成果により、今後アルツハイマー病の新薬開発時の臨床治験の実施を推進することが期待できる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Medical physics
巻: 40 ページ: 062303