研究課題/領域番号 |
24800092
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
水口 暢章 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳情報通信融合研究室, 研究員 (80635425)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 運動学習 / 運動制御 |
研究概要 |
イメージトレーニングによって運動スキルを向上させる事例が数多く報告されているが、その効果は個人の能力に依存し、必ずしも万人に効果があるわけではない。研究代表者はこれまでに、被験者に対して適切な体性感覚刺激を提供することで運動イメージ中の脳活動が高まり運動イメージ形成を促進させることを示唆してきた。本年度は、被験者に体性感覚を提供することが運動イメージ形成に及ぼす影響は個人の運動イメージ能力に依存するかを検証した。テニス選手17名(経験年数2-12年)を対象に、①フォアハンドスイングおよび②バックハンドスイングのイメージを行わせ、その際に実際にラケット①をフォアハンドの握り、または②バックハンドの握り、③ラケットを握らない、の計6条件を行った。運動イメージ能力は、10スイングのイメージに要した時間を計測し、実際のスイングに要した時間との時間差をとした。その結果、イメージに要する時間と実際のスイングの時間差が大きく運動イメージ能力が低いと考えられる被験者では、スイングと一致した握り方でラケット握った条件でより顕著にイメージに要する時間と実際との時間差が小さくなることが明らかとなった。つまり、道具を扱う運動イメージを行う場合、運動イメージが不得意な人は道具の身体化があまりなされていないと考えられ、このような場合に適切な体性感覚を提供することはより顕著に運動イメージ形成を促進できると考えられる。この結果は、運動イメージによるトレーニングに際して適切な体性感覚を付加することは、特に運動イメージが不得意な人に効果的であり、リハビリテーションに有効であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究計画では、質問紙を用いて被験者のスクリーニングを行い、脳機能計測によって運動イメージ能力を評価することを目標にしていた。実際には、運動イメージ能力の評価方法が変更されたが、運動イメージに要する時間によって評価した被験者の運動イメージ能力と体性感覚を提供することで、運動イメージを促進する効果の間に有意な相関がみられることを明らかにできたことから、当初の目標を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究成果で、運動イメージの能力と体性感覚の提供による効果には関連がみられた。しかし、運動イメージ能力と実際の運動能力との関係は未だ不明な点が多い。そこで、今後の研究では、スキルを要する運動課題実行中の脳活動動態を詳細に明らかにすることで、運動能力、運動イメージ能力、体性感覚刺激等の影響を検討する。
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