平成24年度の実験で、被験者の運動イメージ能力と道具を持ったことによって生じた体性感覚入力の影響の関係を個人間で比較した結果、運動イメージが下手な被験者の方が体性感覚入力によるイメージの鮮明さの改善量が大きいことが明らかとなった。サルを用いた先行研究から、同一の被験者であっても、試行ごとに運動プログラムを作っていると考えられる脳活動がばらつくことが示されていることから平成25年度は、試行間の変動を生み出す神経機構を明らかにするために、被験者がよく学習した系列指タッピングを繰り返し行っている時に、その脳活動をfMRIにて計測した。被験者は15名であり、10秒間(1試行)に薬指-中指-小指-人差し指-薬指の系列をなるべく速く、かつ、正確に繰り返すように教示した。各被験者は150試行行った。パフォーマンスの評価は10秒間に何回正しい系列を押せたか(=成功数)とした。その結果、よく訓練した運動課題中であってもそのパフォーマンスだけでなく、脳活動もばらついていることが明らかとなった。具体的には、成功数が低い試行では前頭-頭頂領域の活動が高かった。つまり、前頭-頭頂領域の過活動が運動制御システムに干渉して運動プログラムにばらつきが生じると推察された。もし、前頭-頭頂領域の過活動を抑制することができれば、運動プログラムのバラツキが減少すると考えられるため、安定したパフォーマンスを常に発揮できる可能性が示された。これは、脳活動をモニターし制御することで、より効果的なトレーニングを行える可能性を示すものである。
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