13-オキシインゲノールは1974年トウダイグサ科の植物であるカンスイより単離されたジテルペンであり、その誘導体は非常に強い抗HIV活性を示す。また、インゲノール類は強力なPKC活性化作用があることが報告されているが13‐オキシインゲノールを含めた詳細な構造活性相関研究は行われていなかった。そこで今回、13‐オキシインゲノール全合成の知見を基に13-オキシインゲノールの人工類縁体を多数合成しPKC活性を測定した。その結果、天然物である13‐オキシインゲノールではPKC活性を示さないがC-3位を官能基化することで強いPKC活性を示すことを明らかにした。また、13位に酸素官能基を有さない類縁体であるインゲノールも同様に類縁体を設計、合成し13位酸素官能基のPKC活性に関する影響を調べ、13位の酸素官能基はPKC活性にはほとんど影響がないことを明らかにした。一方、さらなる構造活性相関研究のためインゲノール類の効率的合成経路の確立を目指しインゲノールの合成研究を行った。13‐オキシインゲノールの全合成の経路を参考にインゲノールの全合成に取り組んだが13位酸素官能基の影響のためかC-8位のアルキル化の収率が中程度となり、望みの環化前駆体の合成の総収率が低かったためさらなる検討が必要である。得られた環化前駆体を用いて鍵反応である閉環オレフィンメタセシスを行ったところ、良好な収率でインゲノール類の核となるinside-outside炭素骨格の構築を達成した。その後、同様の合成経路でインゲノールの合成研究を行い、現在インゲノールの全炭素骨格の構築を達成した。13‐オキシインゲノールとインゲノールの合成研究を通し、たった一つの官能基の違いにより反応性が異なる部分があることは合成化学の視点から考え興味深い知見である。今後、二つの構造の最安定配座等を計算しさらに考察する必要がある。
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