研究課題/領域番号 |
24810005
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
フン・ドック トゥアン 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20633465)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | コールセンター / 待ち行列理論 / サービスシステム / 性能評価 / 準出生死滅過程 |
研究概要 |
平成24年度はコールセンターの性能評価として次の二つの課題に取り組んだ. コールセンターには典型的に,Inbound型コールセンターおよびOutbound型コールセンターの2種類がある.前者は電話をかけて来る客に対してサービスを提供する.一方,後者はオペレータ自ら顧客に向けて電話を行う.近年のコールセンターでは生産性を向上させるためInbound業務とOutbound業務 を混合する.このような混合型コールセンターではどのようにしてIncoming call(外から入る電話)とOutgoing call(外にかける電話)をバランスよく設定するかは非常に重要な研究課題である.この問題に関してInbound callとOutbound callは異なる指数分布に従うと仮定し,さらに電話が繋がらなかった客の再試行を考慮した待ち行列モデルを構築した.このモデルに対して既存アルゴリズムの直接応用すると,計算量がサーバ数の6乗に比例する.そこで本研究でこのモデルを記述する準出生死滅過程の特殊構造を利用しサーバ数の4乗に比例するアルゴリズムの導出に成功した. コールセンターにおける運営コストと客満足度を両立するため,自動音声応答装置が導入されている.このシステムは2段処理待ち行列でモデル化することが可能である.今年度は電話回線とインターネットを組み合わせたコールセンターの仕組みを考え,その性能評価を行った.このシステムではIVRで音声案内が終わって,空きのオペレータがいればその回線が開放され,客とオペレータが直接にインターネットで接続することになる.このシステムに対して再試行のある2段型待ち行列システムでモデル化し,解析を行い,いくつかの成果を得られ,電子通信学会の研究会で発表するとともににIEEE-CAMAD2012という国際会議で論文発表をした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合型コールセンターをモデル化するため,Inbound callとOutbound callは異なる指数分布に従うと仮定し,さらに電話が繋がらなかった客の再試行を考慮した待ち行列モデルを構築した.このモデルに対して既存アルゴリズムの直接応用すると,計算量がサーバ数の6乗に比例する.そこで本研究でこのモデルを記述する準出生死滅過程の特殊構造を利用しサーバ数の4乗に比例するアルゴリズムの導出に成功した.しかし,このモデルでは電話の回線数とオペレータの数が同じであると仮定している.さらに現在はポアソン到着や指数サービス時間などを仮定している.次の段階として電話回線の数とオペレータの数が異なる場合やサービス時間・到着過程が無記憶性が持たない場合の拡張が望まれる. コールセンターにおける運営コストと客満足度を両立するため,自動音声応答装置が導入されている.このシステムは2段処理待ち行列でモデル化することが可能である.今年度は電話回線とインターネットを組み合わせたコールセンターの仕組みを考え,その性能評価を行った.このシステムではIVRで音声案内が終わって,空きのオペレータがいればその回線が開放され,客とオペレータが直接にインターネットで接続することになる.このシステムに対して再試行のある2段型待ち行列システムでモデル化し,解析を行い,いくつかの成果を得られた.しかしこの課題においてもまだ到着がポアソン過程,サービス時間が指数分布に従うと仮定している.現実のシステムにより近づけるべく,今後は到着過程・サービス時間に無記憶性がない場合の拡張が望まれる.
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今後の研究の推進方策 |
複数の国際会議に出席し,コールセンターに関する最新の研究動向を把握する.具体的にイタリアで開催されるEURO-INFORMSで研究成果を発表するとともに最新の研究動向を把握する.また,待ち行列理論とネットワークの応用に関する国際会議(QTNA2013)においてプログラム委員を務めているが,ここでも研究成果を発表する予定である. また,コールセンターの性能評価に特化するだけではなく,非常に一般的なマルコフ連鎖に対して新しいアルゴリズムを開発する.研究代表者らはレベル依存準出生死滅過程に関して効率の良いアルゴリズムを開発した.それを使って,コールセンターの待ち行列モデルの性能評価を可能にした.今後はレベル依存準出生死滅過程を含むレベル依存GI/M/1型マルコフ連鎖に対して新しいアルゴリズムを開発し,それを使いより複雑なコールセンターなどのシステムの性能評価方法論を実現する.
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