これまでの検討により、有機色素を添加した高分子ナノファイバーを作製し、同ファイバー中で有機色素の発光が導波することを確認した。平成25年度はこの導波光の伝播損失を正確に評価し、損失の原因を明らかにした。 有機色素を添加したアクリル樹脂(PMMA)のナノファイバーをエレクトロスピニング法により作製した。ファイバーの平均直径は約600 nmであった。添加した有機色素を発光させ各波長における伝播損失を評価したところ、波長590-680 nmにおいて伝播損失が数十dB/cmであることが分かった。この値は、研究が先行している大口径(直径0.5 mm)のPMMA系プラスチック光ファイバーと比して、4-5桁高い値であった。この高損失の原因の1つとして、添加した有機色素による導波光の再吸収が考えられた。そこで再吸収損失を評価したところ損失全体の3%以下という値が得られ主要な損失ではないことが分かった。次に、波長の4乗の逆数(λ-4)を横軸とし伝播損失をプロットすることにより損失原因を特定した。λ-4に比例する損失として、材料の密度むらによる過剰散乱が挙げられる。また、波長に依存しない損失として、形状の不均一に由来する損失が挙げられる。そこで、これらの損失の割合をフィット関数から評価したところ、波長650 nmにおいて全損失の19-50%が後者の形状の不均一に由来する損失であることが分かった。従って、高分子ナノファイバー中の高伝播損失の原因は密度むらと形状の不均一に由来することが明らかになった。 本研究成果により、高分子ナノファイバー中のにおける光播損失が極めて高いことが明らかになった。導波路としてはもちろんのことレーザ等の光源への展開を考えた場合には、さらなる低損失化が求められる。しかしながら、本研究成果により損失の原因が明らかになったことで、低損失化に向けた指針が示されたと考える。
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