研究課題/領域番号 |
24810017
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横田 一道 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (50633179)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / グラフェン / トンネル現象 / 1分子計測 |
研究概要 |
本研究の目的は、グラフェン極薄膜電極を用いたナノポアデバイスを開発し、電界効果でグラフェン電極のフェルミ準位を変調することで、ナノポアを通過する一分子の単分子電気伝導機構を明らかにすることである。 具体的には、グラファイトの一原子層であるグラフェンを用いた極薄膜電極を有するグラフェンナノポアデバイスを作製する。これにより、従来の金電極では達成しえない高空間分解能のトンネル電流型ナノポアデバイスを開発し、一分子解像度の分子検出・識別を行う。更に、グラフェンの零ギャップ半導体という特性を利用し、従来の金属電極では実現不可能であった電界効果による電極のフェルミ準位の制御を行い、一分子がナノポアを通過する際に得られる単分子電気伝導の伝導機構を解明する。 上記課題の達成のため、本年度は面内型グラフェンナノポアデバイスの開発を行った。まず、SiO2/グラフェン/SiO2のサンドイッチ構造を有する電界効果トランジスタ素子を作製した。ここで、上部SiO2層はグラフェンナノポア形成時のキャップ層となるとともに、グラフェンにナノスケール狭窄構造を導入するためのマスク層となる。そこで、第一原理計算によって計算したグラフェンの電子状態を考慮し、上部SiO2には90度狭窄構造を電子線リソグラフィーによって導入した。 続いて、ドライエッチングによりグラフェンを90度狭窄構造に加工した後、狭窄グラフェンの電気破断を行った。その結果、狭窄グラフェンの電気伝導は5mA付近から徐々に減少しはじめ、次いで離散的な減少過程を経てゼロとなった。よって、グラフェン狭窄部の破断は、イオン化機構による狭小化とそれに続く切断現象として理解できる。更に、破断直前の量子化コンダクタンスは、ナノスケールでのグラフェンギャップ電極―ナノポア構造の形成を示唆しており、世界で初めて面内型グラフェンナノポアデバイス構造作製に成功したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、当初研究計画に沿って面内型グラフェンナノポアデバイスの作製と評価を行った。作製したデバイスにおいては、狭窄グラフェン電極のキャリア密度が±3.8E12(/cm^2)の範囲で電界変調可能であることが確認できた。これは、電極フェルミ準位の電界制御下で単分子伝導を計測することにより伝導機構を解明するという本研究の目的達成のため、今後の計画を実施していく上で非常に重要な知見である。 更に、グラフェンナノポア―ナノギャップ電極構造作製のための狭窄グラフェン電気破断においては、炭素原子のイオン化機構に由来すると考えられる伝導度の漸進的な減少と、量子化伝導に帰属できる伝導度の離散的な減少がそれぞれ観測された。これらの結果をもとに、グラフェン電極を用いたグラフェンナノポア―ナノギャップ電極構造の形成機構に迫る事ができた。 本年度は、上記の知見をもとに作製した面内型グラフェンナノポアデバイスを用い、単分子電気伝導計測に取り組む事が可能であり、本研究は当初計画のお通り、おおむね順調に進展しているものと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発した面内型グラフェンナノポアデバイスについて、電子顕微鏡観察やイオン伝導度の測定によってポアサイズ及びギャップサイズを定量的に評価していく。これによりデバイス構造の最適化を行い、単分子電気伝導測定に最適な面内型グラフェンナノポアデバイスの作製に取り組む。 続いて、作製した面内型グラフェンナノポアデバイスを用いて、単分子電気伝導測定を行う。この時、グラフェン電極のフェルミ準位を電界変調させることにより、単分子コンダクタンスとそのゲート電圧依存性を明らかにし、単分子電気伝導機構の解明に取り組む。測定対象とする分子は、当初計画の通り、バイオデバイスへの展開も視野に入れたパイ共役分子を含む必須アミノ酸とする。
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