本研究の目的は、グラファイトの一原子層であるグラフェンを用いて、グラフェン極薄膜電極を有するナノポアデバイスを開発し、電界効果でグラフェン電極のフェルミ準位を変調することで、ナノポアを通過する一分子の単分子電気伝導機構を明らかにすることである。上記の目的達成のため、昨年度は、電極材料としてグラフェンを用いたグラフェンナノポアデバイスについて、その設計指針の確立とデバイスの試作を行った。本年度は、それらの結果をもとに作製したグラフェンナノポアデバイスの評価を行うとともに、グラフェン電極フェルミ準位の電界変調を実証した。 昨年度の結果をもとに作製したデバイスは、90度狭窄構造を有する面内型グラフェンナノポアデバイスであり、グラフェンの狭窄ナノ構造は、電子線描画とスパッタリングによってグラフェン上面にパターン化したSiO2層をマスクとして、酸素プラズマによってグラフェンをエッチングすることによって形成した。上記のナノ加工によって、グラフェン電極には1.3×10^12(/cm2)のホールキャリアがドープされたことが、電界効果トランジスタ特性の評価によって明らかとなった。これは酸素プラズマ処理によるグラフェンのエッジ酸化による影響と考えられ、作製過程による酸化の影響下でも、電界効果による変調が可能であることを示すことに成功した。それとともに、コンダクタンストレースの測定から、このようなエッジ酸化状態にあっても量子化コンダクタンスを経たナノギャップ―ナノポア構造の形成が確認できた。 以上の結果は、ナノポアによる一分子計測において、本研究における面内型グラフェンナノポアデバイスが大気中や或いは溶液中においても利用可能であることを示すものであり、生体分子の一分子計測まで含めた広い範囲に応用可能である事を示唆する非常に重要な知見である。
|