本年度は、近年日本各地で広がっている、英国発祥のフットパスという仕組みに着目し、コモンズのオープンアクセス化について検証を重ねてきた。英国のにおいては「歩く権利法」が整備され、自然享受のための「アクセス権」が法的に認めれた。この歩く権利にもとづいて整備されたのが、「パブリック・フットパス」であり、フットパスが設定されている道については、たとえ私有地であろうと自由に立ち入り歩くことができるとされている。 一方、日本では特有の「日本型フットパス」が広がりを見せている。その先駆的役割を担ってきたのが、熊本県の美里フットパス協会である。その特徴は英国の歩く権利の形成ではなく、集落内もしくはコモンズを「歩かせて頂く」という気持ちを持つことによる地域社会への融合である。つまりは、フットパスによるコモンズのオープンアクセス化は、フットパスづくりを地域の住民とともに行うことによって、地域社会の理解を促す狙いがある。フットパスによって、交流人口の増加を目指すとともに、フットパス客から生活空間を「見られる感」の増大によって、これまで放棄されて荒廃されつつあったコモンズの草刈や手入れが再度活発化されるという効果も生まれた。フットパスの取り組みによる「持続可能な地域づくり」に関する寄与については、本年度発刊された書籍にその研究成果が収録されており、また論文にても公表されている。それは以下のものである。 ①廣川祐司(2014)「フットパスの創造とツーリズム ―熊本県美里町の地域づくりと生業の可能性― 」、三俣学編著『エコロジーとコモンズ-環境ガバナンスと地域自立の思想』、晃洋書房、pp.143-164. ②廣川祐司(2014)「地域活性化のツールとしてのフットパス観光-公共性を有した地域空間のオープンアクセス化を目指して-」、『地域課題研究報告書』 、北九州市立大学都市政策研究所、pp.59-75.
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