研究概要 |
高分子末端の反応を起点として自発的にポリマーが分解する自己解重合型の高分子として、前年度はポリウレタンに着目して対応するブロック共重合体の合成、及び光による解重合挙動を明らかにした。しかしながら、逐次重合法では環状高分子の生成により末端を持たないポリウレタンが得られてしまう点や、得られた高分子に対して更に高分子反応を行う必要があり、非常に合成が煩雑であった。そこで今年度は環状高分子が生成せず末端修飾が容易な連鎖重合に着目し、ポリウレタンと同様に自己解重合挙動を示すポリアセタールの合成を行った。 自己解重合型ポリアセタールの合成は開始剤としてsec-ブチルリチウムを用い、THF溶媒中、-78℃でo-フタルアルデヒドのアニオン重合により行った。この反応の特徴的な点として反応の停止剤により高分子末端に任意の官能基を導入することが可能な点があげられる。そこで、本研究では停止剤として4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジルブロミドを用いることにより、光照射により分解が可能な4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル基を高分子末端に導入することに成功した。また、リビングアニオン重合によりスチレンを重合し末端にカルバニオンを有するポリスチレンを開始剤として用いてo-フタルアルデヒドを続けて重合することにより、一方に光分解しないポリスチレンを有し、もう一方に光により分解するポリアセタールを有するブロック共重合体を得た。 得られた高分子のTHF溶液に対して波長365nmのUV光を照射することにより、ポリマーの分解反応を明らかにした。その結果、光照射に伴って高分子の分子量が減少する挙動が見られたことから、目的とする高分子の分解反応が進行したことが示唆された。
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