本研究は不定語と助詞によって構成される副詞について個々の語の歴史を明らかにするとともに、日本語史や言語変化に関する知見を得ることを目的としている。考察する具体的な語は「どうも」「どうやら」「どうぞ」「どうか」などである。本研究の特色は、文法の問題をふまえて副詞の歴史的変化を考察するだけでなく、副詞を視点として文法の問題を見直すというところにある。 平成25年度における研究業績は以下の通りである。 1.発表「副詞「どうも」の史的変遷」日本語文法学会第14回大会、2013年12月、於早稲田大学 2.論文「近世における副詞「どうも」の展開」高山善行・青木博史・小柳智一編『日本語文法史研究2』ひつじ書房、2014年10月刊行予定(掲載確定済み) 1は副詞「どうも」の歴史的変遷について論じたものである。1は大幅な加筆・修正を加えて2として論文にまとめた。2では「どうもおかしい」「どうもパソコンが壊れたらしい」のような、話し手が事態を不確実なものとして描写する用法がどのように成立したのかについて論じた。それによって、否定と言語変化の関わりや文法変化の一般性についても示唆が得られた。 また、博士論文「日本語副詞の歴史的研究」を九州大学へ提出し、2013年8月に博士(文学)を授与された。この博士論文は個々の副詞の歴史を記述・説明すること、それをより広い視野から捉え直すということを目指したものである。序論、擬声語・擬態語の副詞を扱った第I部、不定語と助詞が結びついて一語化した副詞を扱った第II部、結語の4パートで構成されている。第I部を除く3パートに本研究課題の成果が盛り込まれている。上記の研究業績1、2はこの博士論文の第6章に基づくものである。なお、本論文により、2014年3月に平成25年度九州大学大学院人文科学府長賞(大賞)を授与された。
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