本研究の目的は、バースカラ著『ブラフマスートラ註解』の訳註研究を進めることにより、これまでほとんど研究されてこなかったバースカラのヴェーダーンタ思想を解明することである。 平成25年度は、本文の訳註研究を継続する傍ら、24年度の調査で持ち帰った新しい写本資料の分析を行い、既に完成した校訂テクストと照合するなどして、訳註研究の基礎となるテクストの完成度の向上に努めた。また、25年9月には、インドにおいて、これまで存在が知られていなかった全く新しい写本を発見し、これを入手した。また、26年2月のインド現地調査では、さらに新たな写本1本を発見し、これを入手した。これらの写本については、申請者自らが作成した校訂批判テクストと照合し、欠落部分の比較検討などに基づき写本の系統の確定作業などを行った。また、これらの写本に残された異読情報を一つずつ集め、校訂テクストに反映した。この作業は今後もさらに継続し、より精度の高いテクスト作りのために役立てていきたい。 このように、研究当初には予想していなかった形で新たな資料(3本のブラフマスートラ註解写本と関連する写本1本)が発見されたことにより、訳註研究については試訳を一通り完成させるのみにとどまった。しかしながら、校訂テクスト研究においては、当初の予定をはるかに上回る成果を達成することができた。 年度末にはドイツ・ハレ大学のスラーイェ教授とともに「バースカラ・ワークショップ」を開き、研究テーマについて研究討議し、研究の総仕上げを行った。 本年度は関連するテーマで口頭発表(国内1)を行い、論文発表(英文2)を行った。
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