本研究は、イスラームの一宗派であるイバード派における人間関係論の形成と展開、ならびにその思想の特徴の究明を試みた。作業にあたっては、西暦8世紀から12世紀に活動したオマーンのイバード派の著作を取り上げ、同派における人間関係論の鍵概念である「関わりを持つこと」(ワラーヤ)、「関わりを絶つこと」(バラーア)、そして「判断を停止すること」(ウクーフ)という各概念について考察するとともに、これら諸概念と関係の深い議論である、共同体への入信とコミットメント、信徒による犯罪の問題、そして指導者と臣民との関係についての議論などを分析した。
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