研究概要 |
本研究ではおおよそ以下の成果を得ることできた。 1) 誰もが利用できるウェブサイト「J-LEX」の開発により、語彙頻度プロファイル(Laufer, 1993: あるテキストにおいて、どの頻度レベルの語がどれだけの割合で含まれているかを示したもの)、および、語彙階層分析 (Word Tier Analysis (Matsushita, 2012): あるテキストにおいて、どのようなジャンルのどの頻度レベルの語彙がそれぞれどの程度の割合で含まれるかを示したもの)によって、テキストのジャンル別の語彙頻度レベルを示す方法を開発した。 2) 書きことばの受容的な知識(すなわち「読み」)のための語彙知識を測定する語彙テストの開発。1万5千語レベルまで測れるテストを開発し、一元性を担保する形でvalidationを行うことが難しいことを実証した。古典的テスト理論に基づく検証・改善を進める途上である。読解レベルとの関係についてはデータ収集を行い、日本語における既知語率の閾値を再検討している。テストのweb上での公開には至っていないが、今後の公開を検討している。 3) 上記1)、2)を踏まえた上で、あるテキストの語彙レベルがある学習者グループに適合するかどうかを示す指標の開発を志したが、まだ完成していない。ただし、J-LEXによって一定の既知語率に到達するのに必要なおおよその既知語数を簡便に示すことができるようになったため、おおよその適合度を簡便に判定することができるようになった。また、J-LEXではテキスト入力ウィンドー上でリライトができるため、低頻度語彙を画面上で編集した上で、必要に応じて何度でも語彙頻度プロファイルによる語彙レベルのチェックができる。これにより、生素材を加工して中級や初級に適したテキストを作成したり、graded readers を開発することをアシストするシステムができた。
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