本研究の最終年度となった平成25年度には、本研究費および他の財源をあわせて、国立療養所大島青松園(香川県)で5回、国立療養所長島愛生園(岡山県)で2回、国立療養所沖縄愛楽園で2回、国立療養所菊池恵楓園およびリデル・ライト両女史記念館(熊本県)で1回、調査および踏査をおこなった。 大島青松園ではおもに、キリスト教信徒団体「霊交会」所蔵の歴史資料(以下、史料)、および平成24年度にその存在が明らかになった、同園の在園者が組織する自治会の所蔵史料の調査を継続しておこなった。調査によって、歴代の霊交会員が少なからず担ってきた、戦中から戦後にかけての療養所内の「自治」の具体相の一端が明らかになった。長島愛生園では、おもに同園の神谷書庫において、大島青松園で発行されたにもかかわらず、大島では現存が確認できていない史料の所在調査をおこなった。 また年度途中に、沖縄愛楽園をフィールドとして調査・研究にあたっておられる研究者より、大島青松園に在園していた霊交会員で、離園後に熊本の回春病院を経て沖縄にわたり、愛楽園のルーツとなる療養所の創設に力を尽くした、青木恵哉(1893-1969年)に関する史料が見つかったとの情報が寄せられた。そこで、本研究課題とも関連が深い当該史料の調査も併行して進めるべく、沖縄での調査・踏査、および回春病院が存在した熊本での調査・踏査をおこない、青木恵哉の足跡をたどる作業にも着手した。作業は現在も継続中であり、研究課題としてのさらなる深化を期待できるものと考えている。 調査・踏査と併行して、平成25年6月には第71回経済史研究会(大阪経済大学)、7月には第60回四国地区人権教育研究大会(四国地区人権教育研究協議会)などで研究成果の報告をおこない、平成26年4月にも第48回東京歴史科学研究会大会で報告を予定している。また、あわせて研究成果の活字化も、随時おこなっている。
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