本研究では、近現代日本のハンセン病療養者(療養所に生きる在園者)のキリスト教受容が、隔離政策下にあった療養者の生(life)にいかなる意味をもったのかを、国立療養所大島青松園(香川県高松市)の霊交会に即して追究した。そしてキリスト教受容が、①療養者と療養所スタッフの別を超えたつながりをもたらすとともに、②療養所を外へと「開く」役割を果たしたことを提示した。また、③霊交会員は、療養所の「自治」を中心的に担うなど、信仰を超えた活動によってもネットワークを構築していたこと、④療養者自らの「開く」力の及ぶ範囲は限定的だったことから、療養所内外の「社会」との関係に注視して検討を重ねる必要性も確認された。
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