本研究は、近年中国大陸で陸続と出土している竹簡・木簡の形態をとる行政文書の解読を基礎として、古代帝国の領域支配を支えた諸制度の解明を目指し研究を進めた。第一に、漢代の極めて高度な文書行政システムについては従来よく知られてきたが、その成立過程がほとんど等閑視されてきたことに鑑み、戦国・秦代の行政文書をも活用しながら漢代に至るまでの制度変遷の過程を明らかにした。第二に、従来の資料はほとんど軍事機構出土のものに限られていたが、21世紀に入ると県という民政機構の文書が発見されるようになったため、これを利用して県行政の中枢たる「県廷」と、それに従属する下級機関が構成する地方統治機構の姿を明らかにした。
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