研究概要 |
本年度の研究活動は、当初の研究計画にそくし、南都圏の巡礼記および高野山・熊野についての巡礼記・参詣記に関する基礎資料の閲覧と、その分析にあたったと概括しうる。 前者の南都圏の巡礼記については、『南都巡礼記』注釈のための原稿執筆はもとより、これに関連した資料の閲覧および書誌調査を行った。その成果は、「〈コラム〉紀行・巡礼」(小峯和明編『日本文学史 古代・中世編』ミネルヴァ書房,2013.3)および、「巡礼記と縁起集─寺院空間の「歴史学」」(徳田和夫編『中世の寺社縁起と参詣』竹林舎,2013.5刊行予定)において公表される。 後者の高野山・熊野に関連する研究活動についてもやはり、基礎的文献の収集・分析にあたったほか、重要資料の閲覧・基礎的調査に従事した。現段階では、その成果を明確なかたちで明らかにすることはかなわないが、その一部については、「『平家物語』の鱸─「贄」を食ふ平清盛」(鈴木健一編『鳥獣虫魚の文学史─日本古典の自然観 4 魚の巻』三弥井書店,2012.7)において、熊野圏に関する平清盛関連言説についての分析・検討を行った。 なお、平成25年度以降の研究活動の進展に照らして、和歌山県および大阪府南部地域における寺社との連絡を密にすることが可能な状況となりえ、それに基づく寺院経蔵悉皆調査についての展望も開くことができた。その過程において、平成25年度12月刊行予定の企画として、『アジア遊学』から「寺社圏論のパースペクティヴ(仮題)」なる企画を共編にて刊行することが内定している。
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