1760-1840年代のマレー海域は独立王国の末期と植民地時代の初期にあたり、これまでは衰退と混乱の時代と考えられて来た。しかし、国家ではなく、ヒトとモノの移動に着目するならば、この時期は特に中国市場と結びついた貿易が活発化し、それに伴って移民がさかんに行われた、活力に満ちた時代であったことが確かめられた。輸出産物の主軸がそれまでの限られた希少産品から、海産物・森林産物といった消費産品に移ったことから、より広い社会が世界市場と結びつき、市場志向化した。このような変化を、ヨーロピアン・インパクトに拠るのではない一種の近代化と捉えることが可能であろう。
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