研究課題/領域番号 |
24820035
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
エグリントン みか 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632410)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 上演研究 / 非英語圏 / アジア / 日本 / 翻訳 / 翻案 / 演劇 |
研究概要 |
これまで2000年前後から上演研究に着手し、これまで数々の国内外の学会や学術雑誌を通して論文を発表すると同時に、戯曲翻訳と演劇批評を通して、自ら「日本」のシェイクスピアを生み出す演劇実践にも関わってきた。 後述の研究実績に記述した通り、今年度は、英語論文 'Performing Constraint through Yojohan: Yamanote jijosha’s Titus Andronicus'、野田英樹翻案の『真夏の夜の夢』(宮城聰演出 静岡文化芸術センター)の演劇批評が査読付学術雑誌 Shakespeare Studies 49号と50号 に、『二人の貴公子』についての試論が『外大論叢』に採用された。 また、野田英樹と蜷川幸雄についての小論を2014年に出版される予定のA History of Japanese Theatre(Cambridge University Press)に、藤川健夫、穂高稔、小田健也など演劇人の項目を、2013年度中に出版される予定の『日本戯曲大辞典』に執筆した。 加えて、現代英国演劇研究の成果として、「劇場文化のポリティクスと英国地方都市――ブレア政権の多文化主義から‘Broken Britain’へ」『イギリス映画と文化政策 ブレア政権以降のポリティカル・エコノミー』 (慶応義塾大学出版会)が出版された。 研究に平行して、戯曲・映像翻訳を2本、演劇雑誌に最新の英国演劇の記事、静岡文化芸術劇場(SPAC)などにフランス語版シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』(オリヴィエ・ピイ演出)などを寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
静岡舞台芸術センター(SPAC)で行われた野田秀樹翻案、宮城聰氏演出の『真夏の夜の夢』は、私自身も英語字幕翻訳として舞台作りに関与した作品であり、公演プログラムに「野田秀樹翻案『真夏の夜の夢』の翻訳(不)可能性について」というエッセイを寄稿した。ヴォルター・ベンヤミンの翻訳論を引用しながら、シェイクスピア喜劇の邦訳を大胆に潤色した野田版の英訳不可能な言葉遊びについて論じたこのエッセイをさらに発展させ、3.11以後の日本の社会的状況と演劇の力についての宮城の思想を舞台表象と絡めて分析した論文を遂行を重ねながら台北での台湾シェイクスピア学会、チリのサンチアゴで開かれた国際演劇学会、神戸市外国語大学で英語の口頭発表を行った。現在、Shakespeare Studiesに掲載された英語劇評と発表原稿をもとに、論文を書き直している。 2011年に開始された中屋敷法仁が作・演出を担う「女体シェイクスピア」プロジェクトについて、当初の予定とおりインタビューを取り、その一部を国際演劇協会関西支部が出版する『ACT』に掲載した。シェイクスピア悲劇を日本の昨今の若者が話す口語体をさらにデフォルメして書き換え、女優だけを用いて演じ直した『悩殺ハムレット』と『絶頂マクベス』を、ブレヒトの異化作用に加え、フェミニズムとクイアー理論を援用した論文を現在執筆中である。 上記の状況から、研究はおおむね順調に進展していると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
大学、アーカイブ、劇場、演劇祭という演劇研究と創造の場を繋ぎながら、ヒューマン・ネットワークを拡大し、自らの研究意欲を刺激し、想像/創造力を鼓舞することは、効果的に研究を進めるための最良の策である。具体的に述べれば、 1)劇場や演劇祭という演劇創造の場に足を運ぶこと 2)‘A|SI|A Asian Shakespeare Intercultural Archive’(<他に参加する研究プロジェクト等がある場合における今回応募する研究計画の独自性>参照)などでのシェイクスピア翻案の翻訳作業とアーカイブ構築に携わること 3)国際学会や学術誌で論文を発表していくことである。これらの3アクションを最大の相乗効果をもって行うこと 以上の3点から研究計画を遂行、推進していく予定である。
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