研究概要 |
グローバリゼーションに伴って文化のハイブリット化が進む21世紀の非英語圏、特に日本における、かつての西洋古典たるシェイクスピアの上演研究を行っている。演劇実践者たちが、シェイクスピアを自国の言語と文脈において再構築する際、いまだ無化することはできない東洋/西洋、オクシデンタリズム/オリエンタリズム、伝統/現代性といった二項対立といかに交渉しながら、今、ここに応答しつつ、グローバリティとローカリズムの融合する「グローカル・シェイクピア」を生み出すのか? この問いに答えるため、演劇を生み出す社会的・経済的・文化的背景というコンテキストと照らして翻訳・翻案テキストを読み、公演に足を運び、蜷川幸雄、中屋敷法仁、矢内原美邦、宮城聰といった戯曲作家、演出家へのインタビューを持ち、演劇が生み出される現場とアカデミックな場を結びつけながらリサーチを行ってきた。結果は業績に挙げた通り、台湾や韓国での国際学会と、シェイクスピア学会を始めとする国内学会で発表した後、アカデミックジャーナルで発表してきた。 平行して、『シアターガイド』、『ACT』、『芸術文化』、F/Tの公演プログラムといった、アカデミックに限らない、より多様にして多数の読者層を対象としたメディアに積極的に執筆してきた。業績としては挙げなかったものの、英字新聞The Japan Times のステージ欄(紙面、オンライン両者)にも定期的に劇評を寄稿している。 加えて、戯曲翻訳や公演の字幕作成を通して、自ら演劇の現場に身を置き、野田秀樹翻案・宮城聰演出(SPAC, 2014)の『真夏の夜の夢』の英語字幕などを通して、日本のシェイクスピアの再構築に参加している。現場から得られる知見とアカデミックなシェイクスピアの上演研究は、私の中で必要不可欠な相乗効果を持っている。
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