• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

江戸歌舞伎における興行慣習の実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24820037
研究機関亜細亜大学

研究代表者

佐藤 知乃  亜細亜大学, 法学部, 講師 (90422352)

研究期間 (年度) 2012-08-31 – 2014-03-31
キーワード近世文学 / 近世演劇 / 歌舞伎 / 役者絵
研究概要

平成24年度は、国立国会図書館、早稲田大学演劇博物館、東京大学総合図書館、西尾市岩瀬文庫等の機関において、江戸歌舞伎における曽我祭関係資料の調査収集をおこなった。特に宝暦6年市村座上演『梅若菜二葉曽我』の興行過程を追究し、当該興行が曽我祭の可視化、年中行事化に大きな役割を果たしたことを見きわめ、本研究が目的とする芸能環境の考察、就中興行慣習の実態解明のために、有益な知見を得ることができた。宝暦期以後の曽我祭の展開についてさらに調査考察を加え、全体の成果を次年度に発表する予定である。
西尾市岩瀬文庫の芝居番付写本には特に注目し、書誌、資料細目、書入を検討した。次年度にかけて、資料の成り立ちを考究する。また東京大学総合図書館所蔵芝居番付集の資料構成を分析するとともに、東京芸術大学附属図書館所蔵の音曲資料細目と興行情報との対照をおこなった。
一方、役者絵(浮世絵)については、ホノルル美術館を訪問し、ミッチェナーコレクションの原本調査を実施した。機関との申し合せにより、宝暦期資料を集中的に閲覧し、錦絵前期の色摺技法の展開を仔細に吟味することができた。次年度も引き続き同種資料を調査し、データを追加し、当期役者絵を興行資料として利用する際の書誌的判断につき、まとめて報告する予定である。なおホノルル美術館でも、曽我祭関係資料を見いだした。
国内外の主要機関において、諸種興行資料から役者絵までを幅広く調査することにより、本研究が基盤をおく一次資料の整備を進め、その所産を単著『近世中期歌舞伎の諸相』(和泉書院、2013年)に全面的に生かしたことも、本研究の実績の一部である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、芝居番付、音曲正本・せりふ正本、役者絵(浮世絵)等の基礎資料に立脚して、江戸歌舞伎の芸能環境を実証的に追究するものである。
平成24年度は、網羅的資料として東京大学総合図書館秋葉文庫『〔劇代集〕』を、インデックスの不足により利用が遅れているものとして東京芸術大学附属図書館の写本資料『〔江戸長唄浄瑠璃正本集〕』『〔宝暦明和長唄めりやす集〕』等を、資料の成り立ちについて解明を要するものとして西尾市岩瀬文庫の写本資料『〔扮苑〕』をとりあげ、書誌調査や興行情報の抽出、データ化をおこなった。また浮世絵では、ホノルル美術館ミッチェナーコレクションの原本調査により、色摺技法の展開をめぐる貴重な知見を得た。研究計画にもとづき、広範な資料調査を実現できたことから、本研究の資料整備面は順調に進展しているということができる。
資料調査は所蔵機関単位でおこなわれることが多いが、本研究では特定の芸能環境、すなわち曽我祭という興行慣習の論究をも目的としている。曽我祭可視化に大きく貢献した宝暦6年市村座『梅若菜二葉曽我』に着目し、所蔵機関をまたいだ調査をおこない、当該年度において、20点を超える関連資料を収集することができた。これらの資料により『梅若菜』の複雑な興行過程を解明しつつあるところから、芸能環境の追究という面でも、本研究は順調に進展しているということができる。

今後の研究の推進方策

宝暦6年市村座『梅若菜二葉曽我』および曽我祭関係資料の調査収集は継続し、興行資料に加え、役者評判記、芝居年代記類、芝居随筆、観劇記録も対象とする。西尾市岩瀬文庫『〔扮苑〕』の書入は、観劇記録の一種として扱うことができる。平成24年度に収集した芝居番付を軸に資料の前後関係を同定し、『梅若菜』の興行プロセスを分析するとともに、狂言『梅若菜』の復元を試み、曽我祭上演の実態を検証する。合わせて宝暦期以後の上演例も考察し、当該興行慣習の成立と展開、変容の方向性を見きわめる。その上で曽我祭について判明するところを総合し、江戸歌舞伎の精神面を形づくる曽我狂言上演史と関わらせながら、本研究が目的とする芸能環境の解明を実現する。
実証的研究の立脚点となる資料整備の面では、東京大学総合図書館秋葉文庫『〔劇代集〕』の仮目録化、および東京芸術大学附属図書館の写本資料『〔江戸長唄浄瑠璃正本集〕』『〔宝暦明和長唄めりやす集〕』等のインデックス化を実現し、報告書等に発表する。また西尾市岩瀬文庫の写本資料『〔扮苑〕』の識語や書入の調査考証をおこない、資料の成り立ちを探り、研究会などで発表をおこない、近接分野の研究者からの教示も仰ぐ。
役者絵(浮世絵)については、平成25年度は、シカゴ美術館バッキンガムコレクションを中心に、調査受入を交渉する。引き続き宝暦期資料の閲覧を申請し、錦絵前期の色摺技法の展開を調査検討し、当期役者絵を興行資料として利用する際の書誌的判断につき、報告をおこなう。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 近世中期歌舞伎の諸相2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤知乃
    • 総ページ数
      386
    • 出版者
      和泉書院

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi