本研究最終年度となる平成26年度は、フランソワ・ラブレー作品の描写技巧および描かれたものの形象と16世紀の造形芸術との比較研究の総括を行うため、造形芸術分野の調査と国王の文化政策におけるラブレーの描写技巧研究を行い、それらの発表を行った。 平成25年度から引き続きラブレー全5作の描写技巧分析を行いながら、それらの時代背景をより詳細に検討し、各作品の描写技巧に反映された時代的要請と、著者の描写技巧へ意識の違いを明らかにした。 造形芸術分野の調査においては、ラブレーが作中において言及する建築家に焦点をあて、彼らが展開する建築理論および実践様式とラブレーの描写技巧の照応を行った。また、平成26年6月に開催されたフィリベール・ド・ロルム学会においては、建築学の諸アプローチに接し、研究内容のみならず調査方法の面での知見を広めることができた。 以上の調査結果により、国王の特使としてイタリアに派遣されたギヨーム・デュ・ベレーの周囲において、ラブレーは諸芸術家と出会っており、それらの交流がラブレーの描写に少なからぬ影響を与えていることが明らかになった。今後の課題として、技巧および形象の双方において、後年発展することになるマニエリスム芸術との関連性が確認された。
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