本研究は、十二平均律理論を発明した明代後期の朱載イクの「数」に関する理論を中心に分析した。朱載イクの音楽理論は、『漢書』律暦志の律暦合一の枠組を、宋学の象数易学理論によって構築しなおしたものである。従来の研究は、朱載イクの実証的側面に注目してきたが、本研究は彼の象数易学的思考の重要性を指摘し、何トウの陰陽理論との関係を明らかにし、朱載イクの数学書を分析した。朱載イクの象数易学的思考は、清の江永に受け継がれた。江永は河図・洛書が描く様々な数理を、楽律学に密接に連関させた。平均律は、象数易学的側面がさらに強化されることで、結果として、清代において受容されにくくなったと考えられる。
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