研究課題/領域番号 |
24820053
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中井 真木 早稲田大学, 国際教養学術院, 助手 (30631329)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 服装史 / 故実書 / 院政期文化 / 写本研究 |
研究概要 |
本研究課題は、日本中世の服飾の社会史的研究を進める基盤として、装束故実書のテクストを整備し、成立過程等を明らかにすることを大きな目標とし、その一歩として、鎌倉時代の代表的装束故実書である源通方『餝抄』の写本を調査し、校訂本文の作成、成立過程の研究、引用書籍の整理を行うことを目的としている。 本年度は、1)『餝抄』の写本調査と、2)関連する先行研究の収集を中心に研究を進めた。 1)について、『餝抄』は各地に百を超える写本が残されている。本年度は、国会図書館、内閣文庫、名古屋市蓬左文庫、京都大学附属図書館、東北大学狩野文庫等の所蔵する写本を調査し、必要に応じて複写を入手した。また、国文学研究資料館所蔵のマイクロフィルムにより、陽明文庫等の写本の本文を調査した。その結果、現時点では、内閣文庫所蔵の室町時代のものとされる巻子本(後欠)、また京都大学所蔵の中院家旧蔵本が特に重要な本であると考えるに至っている。また江戸時代の転写系統として、天正十七年の奥書を持つもの、慶長七年の奥書を持つもの、享保二十年の奥書を持つもの等、いくつかの流れを想定することができた。 これらの調査結果を元に、現在もっとも広く用いられている群書類従本のテクストを校訂する形で、本文の検討も進めた。その結果、現時点では群書類従本に本文の大規模な脱落は認められないが、随所で字句等を改めるべき箇所が確認できた。構成面でも、群書類従本は三巻に分かれているが、原態はおそらく一巻であること等が確認できた。また、『餝抄』には本文の上部に補記されている部分があるが、その位置関係等には諸本間に違いが見られた。 2)については、鎌倉時代の朝廷やその文化、古記録、日本の服装文化、村上源氏等について、文献を収集し、先行研究の成果の吸収につとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
写本の調査に関して、事前手続きや日程調整の都合で、申請時の予定よりも集中して行うこととなった面もあったが、着実に実施できた。また本文の校訂や先行研究の収集は予定通り進展できている。
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今後の研究の推進方策 |
『餝抄』の未見の写本について引き続き調査を実施しつつ、現時点で入手できている複写等をもとに本文の校訂と伝本系統の整理を進める。 複数の写本を実見してみて、多くの本に様々な修正や注記が施されていることが判明した。これらについては、鎌倉時代の朝廷社会を考える上では補足的な史料ではあるが、『餝抄』の受容や故実書について考える上では重要な内容を持ち得るため、可能な範囲でこれらの注記類についても整理する。 また、引き続き、先行研究の収集に努めつつ、『餝抄』の成立の過程や背景について考察を行なう。
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