本研究は、学校教育における民族主義的言説と「国民」への統合が強調されている日本と韓国の教育環境のなかで、分離主義的教育自治空間を維持してきた日本の「朝鮮学校」と韓国の「華僑学校」に対して人類学的現場研究を行い、それを比較した。研究の結果、日本の朝鮮学校と韓国華僑学校の教育実践からは、民族的同質性が強調されるホスト社会への抵抗というある種の連続性は認められる。しかし、植民地被支配の記憶の有無という歴史的背景の差と、学校内部の民族構成、曖昧な「祖国」の存在感から、生徒のアイデンティティ構築及び管理における大きな差を生み出しているようである。
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