研究課題/領域番号 |
24820062
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
宮澤 直美 京都産業大学, 外国語学部, 助教 (50633286)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / エドガー・アラン・ポー / メスメリズム |
研究概要 |
本年度前半の主な実績として、Poeとメスメリズムの関係について、“A Tale of the Ragged Mountains”を中心に再読し、作品の中でメスメリズムが人の「複製」を作り出す点に注目した研究を、平成24年10月の日本アメリカ文学会全国大会で発表したことが挙げられる。「複製」という言葉をキーワードに、ポーのナサニエル・ホーソーン批評の中で論じられる盗作に関する記述と合わせて検証した研究内容を口頭発表した。盗作を審美的な精神の一致だとして正当化するポーの創作論の背後に、メスメリズムの言説が潜んでいたことを明らかにできたのは、重要な成果である。 後半の成果としては冬期休暇を利用した米国ニューヨーク公立図書館での資料調査があげられる。ポーが読んだメスメリズムの本Chauncey Hare TownshendのFacts in Mesmerism (1840)や、貴重書セクション(Manuscripts and Archives Division)でのEdgar Allan Poe collection, 1845-1934.(Call number: MssCol 2441)全2箱の貴重な資料を読むことができたほか、ニューヨーク公立図書館内でしか見ることができないデジタルサイトで、メスメリズムに関してどのような言説がポーを取り巻いていたのかを探り資料を収集することができた。資料を持ち帰り、細かい資料分析はこれから行う予定であるが、メスメリズムとポーについて考える際に、銀板写真の流行を関連付けて論じることによって、本研究がさらに大きく前進する可能性を見出した大変意義ある資料調査となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10月の研究発表、渡米調査などの予定を順調に進めることができた。海外調査では貴重な資料を収集することができ大きな成果となった。またその過程で、メスメリズムとポーを捉えるうえで、新たな視点を提供してくれると期待できる「複製」や写真との関連性などの新たな視点を見出すことができ、今後、本研究の一部が大きく進展する手がかりが得られたと感じている。本年度はほぼ研究計画通りに進めることができ、「研究の目的」の半分を占める研究がほぼ目標通りに達成できたため、②を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、今後も研究計画の予定通りに推進していく。平成25年度はポーがメスメリズムの表現を用いているエッセイ、“The Power of Words” (1845)、詩Eurekaを再考し、ポーの短編だけにとどまらず、全体を通じてメスメリズムと彼の創作論について検証することを第一の課題とする。その後、すでに研究を進めてあるポーと骨相学、熱気球、義足や義肢などのテーマと、メスメリズムへの関心というテーマを融合し、ポーの疑似科学への関心についての定説となっているDavid Reynoldsの説を再定義する、という最終課題へと進んでいく。平成24年度の研究で、新たに得られた視点である「複製」そして銀板写真とメスメリズムの関連性を取り込むことでより大きな視野からポーの擬似科学への関心を論じられると予測している。
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