本研究は、Webを中心として草の根的に収集・共有されている「ボランタリー地理情報(VGI)」の動向・特質を明らかにした上で、その主要な取り組みの一つであるOpenStreetMapにおける実践を検討することを目的として実施した。 まずVGIの動向としては、近年のオープンデータに関する議論と関連してニーズが高まっており、英語圏の国家機関(例えば米国USGSや英国Ordnance Survey)などもVGIに関する調査・研究を展開している。特に地理空間情報の精度や地物属性に関する定量的研究が蓄積されつつ樽。さらにVGIに関する各種のワークショップが欧米では近年盛んに実施されており、その普及に寄与している。 次にOpenStreetMapを事例とするVGIの事例研究では、日本を中心とする活動の経緯が明らかとなった。日本ではヨーロッパ圏での活動と比して活発とはいえないが、2011年の東日本大震災発生を一つの経緯として、情報支援を志向する人々が多く参加し始めたことが明らかとなった。また、活動の認知の高まりとともに、日本においても東北地方以外の活動コミュニティも徐々に醸成され、場所によってはフィールドワークを伴うイベントの実施を伴って既存のデジタル地図を超える詳細な地理空間情報が共有されていることが明らかとなった。 VGIを中心とする地理空間情報の共有化は、地図データとしての閲覧用途以外にもどのような活用手法が考えうるかについて、地理空間情報の活用を推進する様々な主体との議論により今後は積極的に議論される必要がある。
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