研究課題/領域番号 |
24820068
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
毛利 英介 関西大学, アジア文化研究センター, 非常勤研究員 (10633662)
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研究期間 (年度) |
2012-08-31 – 2014-03-31
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キーワード | 契丹 / 遼 / 漢人 / 墓誌銘 |
研究概要 |
国内調査としては、東洋文庫にて同文庫所蔵の遼代漢人墓誌銘拓本の調査を行った。そのうち、例えば鄭恪墓誌銘の墓主である鄭恪は、現在の行政区画で言えば遼寧省西部の出身で遼代後半期に活動した科挙官僚である。そして、この人物は漢人であるが契丹語を解したことが墓誌銘において記述され、本研究課題と特に密接な関係をもつ。このように、同文庫での調査は意義のあるものであった。なお、二〇一二年度の調査では日程の都合上その全ての調査を行うことが出来なかったことから、二〇一三年度においても引き続き同文庫所蔵遼代漢人墓誌銘拓本の調査を行う予定である。 国外調査としては、中国遼寧省朝陽市の朝陽博物館を訪問した。同館は本研究課題の主要な研究対象地域の一つである遼寧省西部地域における中核的博物館であり、本研究課題にとって重要な当該地域出土の遼代漢人墓誌銘をまとまった形で所蔵する。これらの墓誌銘は、一部を除き録文こそ発表されているものの、鮮明な拓本写真が公表されていない場合が多いことから、現地での実見がこれまで課題であった。今回それらを一括して実見することができたのは、大いに意義のあることであった。特に、耿氏一族の墓誌銘には契丹語を解した旨の記述があることから、本研究課題において特に重要である。 また、同調査における経由地である北京においては、研究協力者の康鵬氏(中国社会科学院歴史研究所)に面会し、中国における最新の契丹史関連の学術事情について教示を受けることもできた。 成果の公表としては、準学術雑誌である『アジア遊学』に文章を寄稿したほか、年度をまたぐが二〇一三年四月発行の『関西大学東西学術研究所紀要』に中国遼寧省西部出土の墓誌銘を使用した論文が掲載されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように評価する理由は、当初の研究計画に沿って研究を遂行できたことにある。具体的には、まず当初の計画通りに下記のように国内外での調査を行うことができたことによる。 国内調査としては、東洋文庫にて同文庫所蔵の遼代漢人墓誌銘拓本の調査を行った。同文庫所蔵の遼代石刻拓本は学史上古典的価値をもつとみなしうるものであり、国外で新出の資料を調査するのと並行して把握すべき資料と考える。 国外調査としては、中国遼寧省朝陽市を中心に調査を行い、特に朝陽博物館を訪問することができた。同館は、本研究課題において重要な遼代漢人の墓誌銘をまとまって所蔵する機関であり、今次の訪問でそれらを一括して実見することができた。 次に、研究成果の公表も概ね順調と考える。年度の後半からの課題採択というスケジュールの中で、準学術誌『アジア遊学』に文章を寄稿したほか、年度はまたぐが『関西大学東西学術研究所紀要』に中国遼寧省西部出土遼代墓誌銘を使用した論文の掲載が決定した。 以上より、本研究課題が「おおむね順調に進展している」と評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで研究がおおむね順調に進展しているため、引き続き当初の研究計画に基づき研究を遂行することが今後の研究の推進方策となる。 つまり、まずは二〇一三年度も国内外での調査を行うことが柱となる。国内での調査は、二〇一二年度に引き続き、主として東洋文庫所蔵の遼代漢人墓誌銘拓本の調査を予定している。海外での調査は、主として内モンゴル東部(赤峰市等)での調査を予定している。 また、二〇一三年度は本研究課題の最終年度に当たるため、成果の公表も重要な計画の一部である。具体的には、本研究課題に関連する口頭発表を期するほか、学術雑誌に論文を発表することにより成果の公表を図る予定である。
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