本研究は、遼代のいわゆる漢人の存在形態について明らかにすることを目的とした。具体的には、契丹内地に居住する漢人と燕雲十六州に居住する漢人ではそのあり方が異なるのではないかという仮定を明らかにしようとした。その際、漢人がどの程度契丹語・契丹文を使用したかを一つの指標とした。方法としては、中国の遼寧省と内モンゴル自治区での現地調査に基づきつつ、石刻資料を利用して研究を進めた。その結果、燕雲十六州に居住する漢人に比して契丹内地に居住する漢人はより契丹語・契丹文を使用する可能性が高く、契丹人・契丹国家との距離感が近いことを明らかにできたと考える。
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