本研究は、日本語教育の知識や経験のない一般の日本人が、外国人との接触経験を通じて習得する口頭での情報やりとりの方略を明らかにし、日本人と外国人のコミュニケーションを支援するためのプログラムを開発することを目的とするものである。 平成24年度は、日本人と外国人が口頭で情報をやりとりする場面において、日本語教育の知識や経験のない日本人が情報やりとりの際に用いるコミュニケーション方略について、外国人との接触経験があるグループとないグループの比較を行い、「外国人との接触経験を経て、特に教示を受けなくても一般の日本人が自然に習得することができる情報やりとりの方略」と「外国人との接触経験を経ても、一般の日本人が困難を抱える情報やりとりの方略」に関して、より詳細に質的に分析し、情報やりとりの共生言語モデルの構築のための基礎データとした。次に、日本語教育の知識や経験のない日本人が、外国人との接触経験を経て習得する「情報やりとりの共生言語モデル」を構築した。 これらの成果は、「接触場面における母語話者のコミュニケーション方略に関する研究の動向と課題」として論文にまとめ公表した事に加えて、研究論文集の一部、及び博士論文の一部として平成25年度に発表した。 平成25年度は、構築した「情報やりとりの共生言語モデル」を応用して、日本人に対する外国人とのコミュニケーション支援のためのワークショップ形式のプログラムを開発し、地方自治体が主催する外国人とのコミュニケーション支援のための「やさしい日本語講座」にて、プログラムを実施した。プログラムを実施した自治体は東京都と栃木県で、プログラム実施後のアンケートでは概ね良好な評価を得た。
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