本研究では、近世期を代表する和学者賀茂真淵が評注を加えた系統の『金槐和歌集』諸本について網羅的な調査を行い、系統分類を試みるとともに、その伝播状況を考察し、近世後期から明治初期までの真淵学受容の実態を把握する足掛かりとした。 その結果、真淵の評注が数度に亘るものであったこと、また伝播の過程で書き換えや加注が行われたこと、注が変容していくさま、加注に関与した人物、茂吉の実朝研究における諸本の位置付けなどについて新たな知見を加えることができた。また、その作業を通して、真淵の孫弟子上田秋成やその周辺の万葉学などの諸活動を跡付けられたことも重要な成果であった。
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